時雨のコピページ(体より先に肝を冷やせ)


  • [9] 《村はずれの小屋》
    (長編)
    怖『★★★☆☆』
    2014/07/18 20:52

    じっちゃま(J)に聞いた話。

    昔Jが住んでいた村に、頭のおかしな婆さん(仮名・梅)が居た。一緒に住んでいた息子夫婦は、新築した家に引っ越したのだが、梅は「生まれ故郷を離れたく無い」と村に残った。しかし他の村民の話では、「足手まといなので置いて行かれた」そうだ。

    その頃から梅は狂いはじめた。普通に話しをしているかと思うと、いきなり飛びかかり腕に噛み付く。腕の肉が削り取られる程に。そんな事が何度かあると、「ありゃあ、人の肉を食ろうておるんじゃなかろうか」と、村中で噂が広まった。まだ子供だったJは、「なぜ警察に言わんのね?」と言うが、「村からキチ○イが出るのは、村の恥になる」と大人は言い、逆に梅の存在を、外部から隠すそぶりさえあったという。風呂にも入らず髪の毛ボサボサ、裸足で徘徊する梅は、常に悪臭を放ち、日に日に人間離れしていった。


    村民は常に鎌等を持ち歩き、梅が近付くと「それ以上近寄と鎌で切るぞ」と追い払う。

    そんなある日、2、3人で遊んでいた子供達が梅に襲われ、その内の1人は小指を持っていかれた。襲われた子の父母は激怒。梅の家に行き、棒で何度も殴りつけた。止める者は誰1人いなかったという。「あの野郎、家の子の指をうまそうにしゃぶってやがった」

    遂に梅は、村はずれの小屋に隔離されてしまう。小屋の回りはロープや鉄線でグルグルに巻かれ、扉には頑丈な鍵。食事は日に1回小屋の中に投げ込まれ、便所は垂れ流し。「死んだら小屋ごと燃やしてしまえばええ」それが大人達の結論であった。無論子供達には、「あそこに近付いたらいかん」と接触を避けたが、Jはある時、親と一緒に食事を持って行った。

    小屋に近付くと凄まじい悪臭。中からはクチャクチャと音がする。「ちっ、忌々しい。まーた糞を食うてやがる」小屋にある小さな窓から、おにぎり等が入った包みを投げ入れる。「さ、行こか」と、小屋に背を向けて歩き出すと、背後から「人でなしがぁ、人でなしがぁ」と声が聞こえた。

    それから数日後、Jの友人からこう言われた。「おい、知っとるか。あの鬼婆な、自分の体を食うとるらしいぞ」その友人は、親が話しているのをコッソリ聞いたらしい。今では、左腕と右足が無くなっている状態だそうだ。

    ある日、その友人とコッソリ例の小屋に行った。しかし、中から聞こえる「ヴ〜、ヴ〜」との声にビビリ、逃げ帰った。

    「ありゃあ、人の味に魅入られてしもうとる。あの姿は人間では無い。物の怪だ」親が近所の人と話しているのを聞いた。詳しい事を親に聞くのだが、「子供は知らんでええ」と何も教えてくれない。

    ある夜に大人達がJの家にやってきて、何やら話し込んでいる。親と一緒に来た友人は、「きっと鬼婆の事を話しておるんじゃ」。2人でコッソリと1階に降りて聞き耳を立てるが、何を言っているのかよくわからない。だた、何度も「もう十分じゃろ」と話しているのが聞こえた。

    次の日の朝。朝食時に、「J、今日は家から出たらいかん」と父が言うので、「何かあるんか?」と聞くと、「神様をまつる儀式があるで、それは子供に見られてはいかんのじゃ」と説明した。

    しかたなく2階から外を眺めていると、例の小屋の方から煙りがあがっているではないか。「お父、大変じゃ!鬼婆の小屋辺りから、煙りが出ておるぞ」しかし父親は、「あれは畑を燃やしておるんじゃ。下らん事気にせんと勉強せい!」と、逆に怒られた。

    それから数日は、相変わらず小屋に近付く事は禁止されていた。しかし、ある日友人とコッソリ見に行くと、小屋があった場所には何も無かったそうだ。

    村はずれの小屋〜2〜に続く
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  • [8] 村はずれの小屋〜2〜 2014/07/18 20:47

    小屋が無くなってから数日後、Jの友人(A)と共通の友人(B)とで集まった時に、Bが「Cから聞いたんじゃが、なんでも夜中に、鬼婆の霊がCの家の戸を叩きよるらしいで」と話した。

    家に帰り、その事を父に伝えると、「人は死んだら戻って来るでな。なーに、49日が過ぎれば無事成仏するで、気にする事ぁねえ」「でも、なしてCの家に戻るのね?自分の家に戻りゃあええのに」「梅さんは少し変わっていたでな。帰る家を間違がえてるだけだで」とアッサリ言ったので、Jは「なんだ、あたりまえの事なのか」と思った。

    ところがそうでは無かった。どうもCの親が、くじ引きか何かで梅がいた小屋を燃やす役目になってしまい、それが梅の恨みを買ってしまったらしいのだ。それは近所の大人達が、「Cの家に、またイブシがやって来しゃったらしい」「小屋を燃やしたもんで、怨みを買うたんじゃろ」と話をしていたのを聞いたからだ。

    このイブシ?(聞いた事のない言葉だったので忘れてしまったらしい)という言葉は、この村だけのいわゆる『隠語』というやつで、恐らく『幽霊』の意味ではないかとじっちゃんは言った。大人達は、「梅の霊の事は村民以外には話すな。話すと霊がその人の前にやって来る」と言うので、それを恐れた子供達は、誰1人として話さなかった。また、大人達は隠語を使う事により、うっかり他の場所で喋っても、村の恥部が他人に漏れずに済む。とにかくそこの村民は、自分の村を守る事に必死だったらしい。

    夜な夜なやってくる梅の霊に、Cの家族は疲れてしまったのか、「わしらも子も眠れんで困っとる。家を出るしか無かろうか?」と、Jの家に相談にやって来た。Jの父は、「しばらく家を捨てるしかあるまい。最悪、あの家は一度ばらしなすって、作り直しゃあええ。その間は家に住みなっせい」こうしてCの家族は、Jの家に同居する事に。

    さっそく自分の部屋で、JはCにこう聞いた。「なぁなぁ、Cは鬼婆のお化けを見たんか?」「見とらん。ただ、家のドアを叩く音が毎晩するんじゃ」「風とかじゃ無かろうか?」「知らん。最近は耳に布切れ押し込んで寝てまうで、音は聞こえんが、一晩中電気がつけっぱなしなもんで、全然眠れんわ」

    「おい。今日のイブシ除けは済みなすったか?」と、父が母に指図をする。イブシ除けとは、いわゆる『魔除けの一種』で、玄関の軒先に、スルメや餅や果物等をぶら下げておくのだ。この村では、人が死ぬと毎度行う儀式だった。「朝になると、吊るしておいた食い物が無くなっとるんじゃ」とCは言うが、「いや、猿に持っていかれたんじゃろうて」とJは否定した。

    それでもJは不安だった。「Cの家族が家に来た事で、鬼婆も家にやって来るんじゃなかろうか?」と、嫌な予感があった。

    そして夜、Jの隣ではCがぐっすりと寝ている。耳から詰めた布が、はみ出しているのが可笑しかった。下の階では、ガヤガヤと大人達の声がする。しばらく天井をボーッと見ていると、「ドンドンドン」と太鼓のような音が響いた。同時に大人達の声も、一瞬ピタリと止んだ。Jの予感は適中した。梅が家の玄関を叩いてるのだ。Jはそう思うと恐くなり、ユサユサとCを揺り起こした。「ううん・・・なんねー」と寝ぼけるCに事情を説明。共に震えながら、大人達のいる1階に降りて行く。

    大人達はボソボソと何かを喋っている。Jが怯えながら「お父・・」と言うと、「気にする事ぁねえで、さっさと寝なっせ」。またガヤガヤと、大人達は別に気にする事なく、普通にビールを飲みはじめた。

    次の朝、Cと一緒に玄関を出ると、魔除けの食い物が無くなっていた。「な?俺の言う通じゃろ?」とCが言う。その事を親に聞くが、「あれは朝1にしまい込むでな」と答えるだけであった。

    そしてソレはしばらくの間続いたが、ドアをノックする音がしなくなると、「ああ、49日が終わったのだな」と思った。その村では、49日が過ぎるまで墓を作らなかった。遺体は火葬か土葬をしておき、49日が来るまでは「魂を遊ばせておく」そうだ。

    村のはずれには集合墓?があり、村人はここに埋められ墓が作られる。しかし、梅の墓は別の場所に作られる事になった。「御先祖様の墓とキ○ガイの墓を一緒にするのは申し訳ない」という理由だそうだ。死んでもなお村人として扱われない梅に、Jは少し同情したが、怒られるのが恐いので、口にする事はしなかったそうだ。


    そして、梅の墓は川原に作られた。墓といっても1、2本の縦長の板で出来た簡易な物で、さらにその回りには囲いも何も無く、「ただポツンと立っていた」そうだ。しかも、川のすぐそばに立てられている為、ちょっと強い雨が降ると、増水した川に流されてしまう。実際梅の墓は、1ヶ月もしない内に流されてしまった。

    流されるという事は、人に忘れられてしまう。まさに『水に流す』のである。流されてしまってはしかたがない。俺達は悪く無い。そんな『自分勝手な不可抗力』という名の殺人や非道が、その村ではあたりまえに行われていたらしい。

    身内がそばに居ないというだけで、人1人が村ぐるみで消されてしまう恐怖。そして、それをあたりまえと思う大人達に、Jは恐怖した。「自分も大人達の機嫌を損ねたら、何されるかわからん」と・・・だから、その村では大人が絶対であり、いわゆる『不良』と呼ばれる子供もいなく、子供は大人達の従順者であった。

    「村落という閉鎖的な場所で、独自的な文化を持つというのは恐ろしい事で、そこでの常識は常に非常識だった。あのまま村で大人になったら洗脳されて、あの大人達と同じになっていただろう。だからお前は、たくさん友人を作って、色んな人の意見に耳を傾けて、常に自分の行動に間違いが無いか疑問を持て」と、死んだじいちゃんは語ってくれた。
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  • [7] 《芽殖孤虫》
    (短編)
    怖『?????』
    2014/07/18 18:15


    さて、今から50年ぐらい前に、九州の天草というところに24歳の女性が住んでいたそうです。この女性の下半身に奇妙なブクブクした皮下の膨らみが現れました。この膨らみは、徐々にですが、確実に増えて行きました。誰も診たことのない不思議な膨らみに、意を決したある医師が、思い切ってメスを入れてみました。すると……

    膨らみは皮下に出来た水の入った袋で、中に長さ数cmの白いクネクネした虫が入っていました。袋はたくさんあり、中にそれぞれ虫が入っている様です。

    なんということか!

    早速、何という虫か調べられましたが、条虫(扁形動物)の幼虫らしいのですが、

    さっぱりわかり

    何の幼虫か、

    ません。この虫は、恐ろしいことに、幼虫でありながら、人の体内で分離して増えているようです。

    日本で当時4例目、芽殖孤虫出





    現す!



    どこから来たのか、幼虫は人の体内に入り、人固有の寄生虫でないためか成長せずに皮下をさまよい、そして自分の周囲に水の入った袋を作り、中で植物が発芽するように枝分かれして増殖し、増えた幼虫はまたさまよい増殖する。

    治すには、一匹残らず手術で取らなくちゃいけませんが、すでに大変な数だったらしく、残念なことにその患者さんは亡くなってしまいました。

    化け物……

    ヒトを喰い尽くす虫と書きましたが、実際に人を喰っているわけではないと思います。しかし、増殖する虫が全身を這い回れば、大変な臓器出血か臓器不全を引き起こすのは必定で、間違いなく命が危ない疾患です。

    1990年、50年近い沈黙を破って、芽殖孤虫は忽然と東京に現れました。さまざまな感染経路が考えられ調査されたそうですが、結局、虫の正体も感染経路もはっきりしないまま、今日を迎えています。

    その後、報告はありませんが、次はいつどこでこの虫は現れるのでしょうか?感染経路が分からない以上、あなたでないと、誰も言えないのです……殖孤虫、今の所「皮膚科」で見つかることが多いそうです。虫さされ程度のポチッとしたふくらみで、赤みもかゆみのないのですが気になって皮膚科に行ったところ、芽殖孤虫であることが分かるといったケースが相次いでいるようです。

    当然ながら皮膚科ではどうすることもでいないので、然るべき医療機関に送られるわけですが、それは皮膚科の医師が芽殖孤虫の症例を知っていた場合の幸運なケースで、ほとんどの場合は、何らかの虫刺されやかぶれなどと診断されてしまい、芽殖孤虫とは気づかないままらしい。

    またそれ以上に、痛くもかゆくもなく、赤くもなってないごくごく小さな腫脹程度では、せいぜい市販薬を塗ったりするくらいで気にしない、気づかないという人がほとんどだろう。寄生から増殖を始めるまで約三ヶ月、最近妙なポツポツができたという人はいませんか?

    ------------------------------

    ちょっと違うけど私の従妹がボランティアで南米だかに行った時のこと。現地の人に外に干したものは必ずアイロンかけてくれって言われたそうな。ところが従妹はそれを忘れて直接Tシャツかなんか着てしまった。

    実はその地方にはおかしな虫がいて、成虫が干してある洗濯物にタマゴを産む。その幼虫は植え付けられた衣類から、人間の体温等で孵化し、人間の肉を食って成虫になるらしい。そのタマゴを殺すためにアイロンかけろ、って言われたわけで。(ちなみに現地の人は黒人で肌が硬いから平気らしい)

    従妹は後日、腕の下を妙な幼虫がはいずるようになったそうです。その虫は従妹の身体を食いあらして、つめで押すとぷちっと出てきたらしい。結局殺虫剤入り塗り薬で直したらしいけどそんなこと焼肉やで言わないでくれよ…。気持ち悪くて喰えなくなっちゃったじゃないか。
    イイネ! 返信
  • [6] 《謎の箱と禍々しい物》
    (短編)
    怖『★★☆☆☆』
    2014/07/18 17:06

    G県H市のある村に、ある家族が住んでいた。寝たきりで99歳にもなる祖父、その孫で5歳のA、そしてその両親。昼間、両親は働きに出ている。Aはとても好奇心旺盛で家の中を遊びまわっていた。ある日、Aが何気なくふすまを開けると天井裏に通じる板が外れていた。家の中にも飽きてきたAはしまってある布団をよじのぼり、そこに入った。周りは想像以上に暗く、恐怖心が湧き上がった。しかし、好奇心が勝り更に進んでいった。しばらく歩き回っていると足元に箱があることに気がついた。「こんなところにあるくらいだから、きっとすごいものに違いない」とAは考え、入り口のほうに運ぼうとした。しかし以上に重い。子供の頭ほどなのに10キロはありそうだ。仕方なく引きずっていくことにした。だんだん入り口に近づくにつれ、箱の側面が見えてきた。真っ黒で、ところどころ白い。ふたは黒い紙で固定してあった。さらに近づく。さらに明るくなってくる。真っ黒だと思っていた側面は、白い箱に黒い文字がびっしりと書かれているようだ。ふたの紙も同様。白い紙に文字がびっしり書いてあった。振り向いて入り口の位置を確認する。あと1m位だ。もう一度箱を見た。そこで、あることに気がついた。箱の側面にびっしりと書いてある文字。それはお経だった。蓋についている紙はお札だった。

    そのとたん、Aの体に恐怖が電気のように走った。そのとき、前方の暗闇から「ペタ・・ペタ・・」という足音がしてきた。Aはとっさに「それ」を絶対に見てはいけないと思った。振り向いて逃げようとしたが、恐怖で足が動かない。どんどんこっちに近づいてくる。あと少しで「それ」に入り口の光が当たる。そうしたら見えてしまう。あと少し・・・・・もうだめだ。と思った瞬間、Aの体は入り口の穴に落ちていき、布団の上に落ちた。Aが顔をあげると、そこには寝たきりのはずの祖父がいた。わけもわからず唖然としていると、祖父はいきなり「去れ!!」と叫んだ。Aは混乱してきた。祖父は再び「もう十分であろう!!」と叫んだ。祖父の顔を見上げる。しかし祖父はAをみていない。入り口を凝視している。正確には、入り口にいる「それ」を。しばらくその状態が続いた。とても長い時間に思えた。五分ほどして、祖父はAにゆっくり「後ろを決して振り向かずに、わしの部屋へ行け。いいな。絶対に振り向くな」といった。Aはわけもわからずままさっとふすまから飛び降り、隣の部屋を目指した。そこで呆然と立ち尽くした。さらに五分後、祖父がよろよろと部屋に戻ってきた。今にも倒れそうだ。Aは祖父を支え、布団に連れて行った。祖父は横になると、ため息をつきゆっくりと話し出した。「A、今のはな・・・わしの・・・」とまで言ったとき、向こうの部屋でふすまが開く音がした。そしてまた「ぺタ・・ぺタ・・」という足音が聞こえてきた。

    祖父はいきなりAの手をつかみ、布団の中に引きずり込んだ。99歳とは思えないほどの力だった。今度は祖父の部屋の扉が開いた。祖父の体はガタガタと震えていた。そして何かつぶやいていた。よく聞こえなかったが、「すまない」「許してくれ」「この子だけはやめろ」と言う風にきこえた。Aはそのうち気が遠のいて目の前がゆれてきた。そのとき布団の隙間から「それ」の足がみえた。腐っているかのような紫色でところどころ皮膚がずり落ちていた。そのままAは気絶してしまった。気がついたとき、Aは祖父の布団に一人で寝ていた。時間はあのときから五時間も過ぎている。祖父は・・・?Aが家中を探してもどこにもいない。両親が帰ってきて、警察がでてきても見つからなかった。一週間後どうしても気になり、Aが恐る恐るふすまを開けると、以前あった入り口は完全にふさがっていた。Aは安心してふすまを閉めようとした。そのとき、Aは見てしまった。厳重にしめられた入り口の戸に挟まっている、祖父がしていたお守りを。
    イイネ! 返信
  • [5] 《お札の家》
    (長編)
    怖『★★★★☆』
    2014/07/18 16:59

    2年程前の話ですが、つい最近完結(?)した話があるので書いていこうと思います。長くなりそうで申し訳ないのですが、霊感0の自分が唯一味わった霊体験です。

    広島県F市某町、地元の人間なら誰もが知る有名なスポットがある。「お札の家」

    ばれたその場所には、名前通り無数のお札が貼られた家がある。他の噂ばかりのスポットとは違い、ソコを訪れた大学の友人はほぼ全員が不思議な体験をしたという。普段霊感のない人にも見えるらしい。

    友人の話「家の周りだけ不自然に濃い霧が覆っとったんよ、んで冗談半分で霧に塩投げたらいきなりブワッと霧が裂けたんじゃーw流石にヤバ過ぎる思って逃げたったw」どうやら異様な数の霊が集まってくる場所で、見える人によればお札に阻まれ家に入れない霊がウヨウヨいる、

    のコト。上の友人のコメントは印象強くて今でも忘れられないが「霊感が無くても見えた」霊感の無い自分にとってはいつか行きたい魅力的なスポットだった。


    ふとした日、ファミレスでの食事中にお札の家の話を切り出した。居合わせた仲の良い先輩とその彼女、友人S、

    リ気「今すぐ行こう」

    た。元々地元の先輩と彼女は高校時代に行ったことがあるらしかったが、恐くて車を降りれなかったらしい。他県からきていたSは特にノリ気だった。話を出した後で少し恐くなり後悔したが、遅かった。

    自分「いや、ホンマにヤバいらしいで?ソコ行って一週間寝込んだヤツとか、帰り事故ったヤツとか普通におるらしいで?」S「今さら何ビッっとんw俺霊感あるし、子供の頃から普通に霊とか見ようたし、その気になりゃ霊にもキャン言わしちゃるけぇねw」

    自分は内心コイツ馬鹿だ

    と思っていたが

    なー、

    本当に危ない霊がいたらすぐに教える、お前を先に逃がす。と言われ普段から怖いもの知らずで気が強いSが同伴するということもあり、お札の家に行くコトを承諾してしまった。

    時間は大体23時を回ったくらい。心霊スポットに来るには早い時間だったが、お札の家に続く林道は重々しく、暗いってだけで雰囲気があった。

    車から降り「うっわ、やっぱヤメといた方がエエんと違うーっ!?w」等とハシャイでいたが、先輩カップルが車から降りて来ない。自分「どぉしたんすかー?w」先輩「R(彼女)が気分悪いから無理やって、俺も残るわ」S「えぇー!せっかく来たんすから見るだけ見に行きましょうよー!」先輩「いやいやホンマにえぇわ、お前ら二人で行ってき」S「何ビッてんすかw霊なら俺に任しといてくださいよー!」先輩「うるしゃーわお前!

    Rが気分悪い言うとろうが!!調子に乗んな!

    半分喧嘩になりかけたので慌てて止めに入り、渋々二人きりで行くことになった。S「あーもー何なん!?絶対あの二人車の中でエロいコトする気やで」自分「こんな所てそれはないじゃろ…てかお前先輩に態度デカ過ぎ」

    「戻ったら思いっきり窓ガ



    ラス叩いて脅かしちゃろうでw」自分「…」

    呆れて言葉も無かったが、急に視界に飛込んできたバリケードに驚き、立ち止まってしまった。

    S「…こっからが本番っちゅうコトかw」

    ここから先○○市保有地区により立入り禁止。

    有刺鉄線まで使われた厳重なバリケードだった。乗り越えることができなかったので、一度林に逸れて、の有刺鉄線が途切れた所で乗り越え、

    た道に戻り先に進んでいった。


    今考えるとあのバリケードを越えた瞬間、急に寒くなった気もするし、そんなコトは無かった様な気もする。とにかく空気が変わった、

    てコトは自分にもわかった。緊張してしまい、無言で歩く自分。裏腹にSはやたらキョロキョロし「あっソコにおるなー。おぉ!アッチにもおるで〜。」相変わらずのハシャギ様だった。

    所でお札の家にはダミーがある、というコトを前々から聞いていた。

    学校の友人「あんなー、林道を進むとまず一件の白い家にぶつかるんじゃ。でもその家は放置されたホンマに普通の民家じゃけ、その家の横に登坂になった獣道があるけぇソコを登らんとお札の家には辿り着けんよ?タマにその普通の民家をお札の家と勘違いしてそのまま帰ってくるヤツとかおるけぇのーw」

    そしてそのダミーの家は本当にあった。Sにダミーの家の話はしてあったので、二人とも落ち着いて家の横の獣道を目指した。

    そこでSが「ちょぉ待って、煙草に火ィ着けるけぇ」と立ち止まった。なかなか火が着かない。ボーッと白い家を眺めていた自分は「ココも中々雰囲気あるなぁ」と白い家に近づいた。



    なぜかその普通の民家も周りをチェーンで仕切られていた。特に何も感じずチェーンをくぐろうとすると

    「Mっ!!(自分の名前)」

    Sに呼び止められた。驚いて振り向くとSが煙草をくわえたまま目を見開いてコッチを見ている。何事かワケが分からず動けないでいた自分だが、

    が自分では無く、

    に向けられいる、

    時全身に鳥肌が立った。背筋が凍るように冷たくなったのは生まれて初めてのコトだった。

    すぐにSに向かって走り出したいがどうにも足が動かない。完全にパニックになっていた。それを察してかは知らないが、突然Sが

    「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!

    と馬鹿デカい雄叫びを上げ、もと来た道へ走りだした。その大声に助けられ、

    に帰って全力で駆け出した。林道がやけに長く感じ、絶望的な恐怖感があったが「後ろを振り返ってはいけない、ってまさに今のこういう状況のコトを言うのだろうな」という考えが頭をよぎったのを覚えている。

    ようやく林道を抜け一般道に飛び出し、凄い勢いで車に乗り込んだ。


    車に乗り込むとただならぬ様子を察知した先輩が聞いてきた先輩「どうしたんなお前ら!?何があった!

    自分はガタガタ震えが止まらず、まともに答えるコトができず、「とにかく早く車出してください…お願いします…すんません…お願いします…」その場所から離れたい一心でそれしか言えなかった。怯え方が尋常ではなかったので、先輩もからかったりせず車を急発信させた。しばらく無言のドライブが続き、先輩の彼女のすすり泣く声が聞こえるだけだった。

    不意に背中を強くバン!バン!と叩かれた。驚いて横を見ると、満面の笑みを浮かべたSの顔があった。

    S「楽しんでもらえた?w」その一言で全てを理解した。

    正直Sを殴り倒したかったが、怒り以上に安堵感、解放感が溢れてきて一気に体中の力が抜けた。先輩も状況を飲み込んだらし

    「S、お前なぁ〜」とミラー



    越しにSを睨みつけていた。

    コイツは最悪だ、

    けは二度と心霊スポットには近付かない。あーでも、良かった〜…

    先輩も同じ気持ちだったのだろう、普段怒りッポイ性格だがSを責めるコトはあまりせず、彼女をなぐさめていた。

    落ち着きを取り戻した車内は一気に明るくなり、

    時の状況を再現するなどして街に戻る頃には元のテンションでハシャイでいた。

    ちょうどコンビニに差し掛かり、先輩が「飲み物買うか」と言ったその時だった

    「ドン」

    車の屋根から大きな音がして車内が揺れた。先輩はとっさに急ブレーキを踏んでしまい、後続の車からクラクションが鳴り響いた。先輩「えっ何!?今の何なん??」R(先輩の彼女)「とりあえずコンビニ入ろ!後ろの車に迷惑だし!」自分にも何がなんだかさっぱりだった。鳥か何かかな?でも有り得るかそんなコト…考えている内に車はコンビニに入った。急いで車から降り、屋根を確認するが、ヘコんでいる様子はない。携帯のライトで照らしても傷がついたような跡は見当たらなかった。先輩「おかしいなぁ、絶対何か落ちてきたよなぁ!なぁ!」何が起きたのか全く検討がつかず、車の周りや近くの道路をウロウロしていたら、

    降りてきていないコトに気づいた。車に戻りSに「どうした?」と聞くが返事が無い、うつ向いて少し震えている気がした。変な胸騒ぎがして強めに肩を揺すって「おいどうしたんなお前!

    と叫んだ。

    Sはしゃがれた声で「ついてきとる」と呟いた。

    お札の家〜2〜へ続く
    イイネ! 返信
  • [4] お札の家〜2〜 2014/07/18 16:55



    Sの一言に自分は正気を失った。

    ついてきとるって何なん!?お前あれ嘘だったんと違うんか!

    ざめて震えている。先輩の彼女も泣き出してしまった。

    着こうというコトでコンビニで暖かい飲み物を買って与え、少しずつ話してもらった。

    S「ハナッからヤバかったんじゃ、あの場所は。バリケードあったじゃろ?あれわざわざ林の奥まで逸れたのは有刺鉄線があったからじゃなくてバリケードのすぐ向こうに人が立っとったからなんよ…お前には見えてなかったみたいだから、何も言えんかったけど、あそこで行くのヤメようて言ったら糞カッコ悪いやん。

    リケード越えても霊はウジャウジャおったよ。林の中や林道に立ってた。でも俺らには何の興味も無さそうに見えたから何とか平気なフリができたんよ。…ダミーの家に着いた時、そこにはホンマに霊はおらんかった。やっと安心して煙草吸おう思ったんじゃ。で火着けよる間にお前がどっか行くからお前の方見たらおったんじゃ。

    髪の長い女が。

    チェーンくぐろうとしとるお前を見下ろしとった。

    逃げようとしたけど遅かった。お前が振り向いた時にはその女がお前の背中に抱きついとった。

    Sのアパートに戻った自分達は、飲む予定で買っておいた酒も飲まず、直ぐ様寝てしまった。

    寝るドコじゃないと感じていたが、不思議とすぐに意識が飛んだ気がする。

    次に意識が戻った時、洗面所の声から

    「ゲェ〜〜!

    と何かを吐く声が聞こえた。

    洗面所に向かうとSが便器にうずくまって吐いていた。

    ?S!!しっかりしろ!

    叫びながら夢中で背中をなんどもさすった。でも便器の中を覗いて氷ついた。

    Sは血を吐いていた。

    飛びそうになる意識を必死で保ち、狂ったようにSの背中を叩きまくった。「コノ野郎!

    コノ野郎!

    の背中を叩き続けた。

    暗い豆電球にした部屋の電灯が風も無いのにユラユラ揺れていたのを鮮明に覚えている。

    どのぐらい時間がたったのかわからないが、呼んでおいた救急車が到着し、運ばれるSと共に救急車に乗り込み病院に向かった。

    識はなかったが、俺の服を掴んではなさなかった。

    Sが救急病院にて治療を受けた後、医者から説明を受けた。

    Sは声帯を損傷しているとのコトだった。ただ滅茶苦茶に叫んだ程度ではそうならないという訳で事情を聞かれたが、俺は答えることができなかった。

    翌日から別の病院に入院し、

    日の様に見舞いに行ったが、声帯治療のためSは話せなかった。紙に文字を書いての会話となったが、

    しく、そして悲しくてあまり多くの会話はできなかった。

    夜の事など聞けない。

    しばらくそんな感じで過ぎて行き、もうじき退院というある日、見舞いに行くとSがいなかった。

    昨日退院した」ということらしかった。

    「連絡ぐらいよこせよ。」

    つ、Sに退院おめでとうのメールを送った。ポストマスターからメールが返ってきた。

    いた。嫌な予感がしてあわてて電話するが、番号自体変えていた。

    とにかく大学にくるのを待つしかないと思ったが、

    感は的中した。

    Sは大学を辞めていた。総務課で実家の番号を調べて欲しいと頼んだが、辞めた生徒の電話番号を勝手に教えることは出来ないとのコト。

    に連絡をとる手段が途絶えた。

    その後約2年間、俺が大学在学中はSに会うことはなかった。

    〜後日談〜「言霊」

    最近、Sと再会したキッカケは同じサークル内の後輩が、

    だとわかってからだった。

    理言って、先々週の土日を使ってSの地元に案内してもらった。

    で良くSと遊んだというその後輩はSの自宅も知っており、少々強引かと思ったが前々からSが気になってしょうがない俺はSの自宅を訪れた。

    朗らかな感じで背の低い、活発そうなSの母親が出てきた。事情を説明すると驚いていたが、すぐにSを呼んでくれた。

    髪を坊主にしていた。

    目を丸くしていたが、

    笑いしながら罰の悪そうな声を出し

    本当に久しぶりにSの元気そう

    た。

    な姿を見て俺は泣きそうになった。

    部屋に上げてもらい、色々と話しを聞くコトにした。妙に緊張してよそよそしい会話だったが、

    に答えてくれた。

    のでポイント毎に要約して書いていきます。)

    @あの夜何が起こったか

    爆睡する自分の横でひたすら眠れなかったS。眠れなかったというかSは敢えて眠らなかった。朝まで絶対に気を緩めまいと固く心に誓ったらしい。そして深夜、寒くなったSは布団を取りに押し入れを開けた。

    こにあの女がいた。

    ンを取る間も無く、その女はSに重なった。そこからの意識は飛び飛びだったという。気づくと便器に向けて「ウゲェー!ゲェー!」吐いていて、「本能的に異物を吐き出そうとしたんかな?」と語っていた。

    てくるのは血ばかり、

    で死ぬかもしれない」と覚悟したらしい。もう「吐こう」という意識とは

    口から血が溢れてくる。

    関係なく、

    俺が背中叩いたり名前を呼び続けたのも覚えていないそうだ。

    A何故突然退院したのか、連絡手段を途絶えさせたのか

    病院の医師曰く

    しかった。声帯はほぼ完全に治っており、尚も声が出ないのはSの意識問題、精神面での傷。つまり、

    の管轄外ですよ。

    だ。Sの母親はクリニックに通いつつの学業復帰を薦めたが、

    後、大学を辞めて実家に帰ると訴えた。何と言われようが絶対に折れなかったらしい。

    来てもらい、

    半分狂いかけとったなw、

    ても病院やクリニックで何とかなるとは思われんかった」女は毎日夢に出てきた、以前には無かった夢遊病の癖もついていたそうだ。

    くなる前に神社か寺で祓ってもらい、田舎で静かに暮らそうと考えていたらしい。連絡手段を途絶えさせたのには、ただ「心配させたくなかた」とだけ答えたが、俺はSが全てを忘れたかったんじゃないか、

    いる。

    Bあの女はどうなったのか

    実家に戻る前に両親に全てを打ち明けていたSは両親同伴の元、地元にある大きな寺を訪れた。

    、寺に着くなりSは住職により本堂に案内され、

    けなさい。」と言われた。声の出せないSは紙とペンで全てを打ち明けようとした。しかし突然、途中でペンが止まった。

    リしている時に、

    ない程の金縛りにあったのは初めてだったという。突然Sが苦しみ出したので住職達は大急ぎでお祓いを始めたらしい。

    になり、数人のバタバタという足音、お経や金属音を暫く聞いてプツリと意識を失ったらしい。

    ますと寺の客間の布団の上で、住職と両親が側にいた。住職が話してくれた。

    特に強い怨念を残した霊で、

    が普通ではなかった。

    しており、Sはもう少し遅ければ本当に危なかったとのコト。

    中々出て行かないのでこんなモノを使いました」と木彫の仏さまを見せてきた。身代わりの効果があるらしく、簡素な作りの人形だったがSにはとても神々しく見えたという。

    Bあの女はどうなったかその2

    Sが声を失ったのにも意味があるらしかった。声には力があるらしく、霊が媒体を支配する際にその力を奪う、と言うのは良くあるコトらしい。言霊(コトダマ)と霊は密接に関係しているそうだ。

    お祓いが済んでもまだ声を出せない様子のSを見て両親は心配したが、住職曰く「もう大丈夫。栄養をとって数日落ち着けば声も出るでしょう」

    実際一週間程で徐々に声

    とのコト。

    は回復し、以前通りの生活を過ごせるようになったという。

    らくしてSは派遣業者に勤め、無事に今まで過ごしてきたとのコト。

    Sはお祓いの後、あの女はおろか一度も霊を見ることがなく、霊感を無くしてしまった、

    。身代わりの仏さまにそういう力ごと封印されたのでしょうか?とにかく本当に危ない心霊スポットには遊び半分じゃなくても近づくもんじゃないってコトですね。

    う異界のモノをどうにかできる力なんてありゃしないんだと思い知らされましたよ。
    イイネ! 返信
  • [1] あげ 2014/07/17 13:11

    楽しみに待ってます♪
    イイネ! 返信